相続は、人が死亡すると開始され、ある人の財産が他人に受け継がれることをいいます。生きている間は自分の意志に基づき管理していた財産は、死亡によって配偶者や子などの親族に受け継がれます。
相続の場面においては、死亡した人のことを被相続人といい、被相続人から財産を受け継ぐ人のことを相続人といいます。誰が相続人になるかは民法で定められていて、法定相続人と呼ばれています。
相続におけるトラブルについて、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
目次
相続人は包括承継をするのが原則
民法では、相続人は「被相続人の財産に属した一切の権利義務」を承継すると定めています。
この民法の定めは、被相続人が置けれていた立場や地位を、そのまま相続人が引き継ぐことを意味し、これを包括承継といいます。
不動産・現金・預貯金などのプラスの財産だけを相続するわけではないので注意しましょう。
たとえば、被相続人がAに建物を貸していた場合、建物の貸主という地位が相続人に承継されるため、相続人が被相続人に代わり、Aに建物を貸し続けなければなりません。また、被相続人がBから借金をしていた場合は、借主の地位が相続人に承継されるため、相続人は被相続人に代わりBに借金を返さなければなりません。
例外的に一身専属権は相続の対象とならない
一身専属権とは、その人だけが持つことのできる立場や地位のことを意味します。たとえば、子の親権者の地位、会社の従業員の地位、音楽家としてピアノの演奏をする義務などがあります。
相続人としては、相続する際、被相続人の立場や地位が一身専属権なのかどうかを確認することも大切です。
相続に関するトラブルの原因とは
相続に関するトラブルは、次の3つに分類することができます。
- ①誰が相続人になるのか
- ②遺産分割方法が決まらない
- ③相続税についての問題
誰が相続人になるのか
被相続人の死亡後に家族が把握していなかった相続人の存在が判明したり、相続人であるはずの人がその資格を失ってしまうなどの事情が発生したときは、誰が相続人になるかについてトラブルが生じることがあります。
たとえば、父が死亡した時点で、母がすでに死亡しており、相続人が子2人のときには、相続人が子2人に確定するのが原則です。しかし、後から父に婚外子(非嫡出子)がいたことが判明すると、相続人として子が1人増えるため、1人あたりの相続できる遺産の割合が減ります。
また、配偶者も子もいない人が死亡した場合、その被相続人の親が相続人となりますが、後から被相続人に子がいたことが判明すると、親は相続人としての資格を失います。
遺産相続手続において、戸籍謄本等を集めることにより誰が相続人になるのかを確定させる作業を行う必要があり、この作業のなかで被相続人の家族が把握していなかった法定相続人の存在を知ることもあり得るのです。
遺産分割方法が決まらない
法定相続人を問題なく確定できたとしても、相続人同士で遺産をどのように分けるかという協議(遺産分割協議)がうまく進まないケースがあります。
遺産の換金や名義変更には、基本的に相続人全員が実印を押印した書面(遺産分割協議書)が必要となるため、相続人同士の協議がまとまらない場合はスムーズに相続手続を進めることができません。
もっとも、被相続人が遺言を残していた場合、遺言に記載されている内容に従って遺産を分けることになるので遺産分割に関するトラブルは生じにくくなります。
遺産分割協議がまとまらない場合
遺言がない場合の遺産の分割が話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に調停や審判を申し立てる必要があります。こうなると解決まで時間がかかるので相続人の負担は大きくなるといえます。
相続税についての問題
相続人が実際に遺産を取得した場合、基礎控除額を超えると相続税の納付が必要となります。不動産をはじめ、高額な財産を相続したときは、相続税の額も比例して多くなるので、遺産分割においては相続税についても考慮が必要となります。
相続したくない場合の選択肢
相続人は、自分の意志に関わらず被相続人の権利義務を承継する包括承継が原則とされていますが、被相続人が多くの借金を残していた場合など、相続をきっかけに相続人に多大な経済的負担がかかることもあります。
民法では、このような経済的負担の回避を認める手続として、相続人としての資格を自ら失わせる相続放棄と、被相続人のプラスの財産の範囲でマイナスの財産を承継する限定承認の制度が設けられています。
ただし、限定承認は相続人全員で行うという制約があるので注意が必要です。
相続トラブルに関するまとめ
- 債務や義務もまとめて承継するのが相続の原則
- 相続争いの主な原因は主に法定相続人の地位、遺産分割協議の不成立、相続税の支払い
相続トラブルは資産家の相続だけの問題でなく、むしろ現金・預金よりも不動産の価値の方が大きいような一般家庭に多くみられます。
この記事で紹介した相続トラブルの原因は、被相続人が有効な遺言を残していれば未然に防げることが多いです。
どのようなときに相続トラブルが発生するのかを知り、遺言や家族での事前の話し合いにより相続トラブルを未然に防ぐのが理想的です。