不動産や預貯金、有価証券など財産の種類別に、相続手続きの流れと必要な書類について、名義変更という煩雑な業務の全体像を説明します。
この記事では、名義変更手続きの流れと必要書類(財産の種類別)を日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。
不動産の相続手続き
不動産相続(土地・建物・マンション・農地等)の流れと必要書類について紹介します。
不動産の相続手続きの流れとは
不動産の相続手続きの大まかな流れは以下の通りです。
- 相続人調査(戸籍謄本・除籍謄本・改勢原戸籍謄本の収集)
- 相続財産の調査・確認・評価
- 遺産分割協議
- 相続人全員の署名・捺印・印鑑登録証明書を揃える
- 手続き代行(※登記申請は司法書士に依頼)
- 手続き完了
- 相続税申告(相続税の申告が必要な方のみ)
- 不動産売却(相続不動産を売却する方のみ)
これらの項目について、個別に解説していきます。
不動産の相続手続きは早めに開始するのが得策
不動産の所有者が亡くなった場合、不動産の名義変更の手続きをするには相続手続(登記申請)が必要となります。
不動産の相続に期限はありませんが、放置したままにすることは好ましくありません。
たとえば、相続手続きをしないままにしておくうちに、その相続人が亡くなれば新たな相続が発生し、遺産分割協議をする相続人が増えていく可能性があり、こうなると戸籍謄本をはじめとする相続に必要な書類の収集にかなりの労力と費用を要することになります。
さらに、相続人が増えて相続が複雑化し、当事者間での話し合いになると衝突することもあるため、協議がうまくいかない傾向にあります。
したがって、なるべく早く相続手続きを開始するのが望ましいでしょう。
不動産相続手続きの必要書類
以下は、状況別の手続き書類の一覧です。自分の状況に応じてどのような書類が必要になるのかを確認しましょう。
遺産分割協議により相続する場合の必要書類
- 登記申請書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票(死亡後5年以内の場合)
- 相続人全員の実印が捺された遺産分割協議書(相続人が1人の場合は不要)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続する人の住民票
- 固定資産評価証明書
遺言により相続人のひとりが相続する場合の必要書類(遺言執行者がいない)
- 登記申請書
- 遺言書正本
- 公正証書遺言以外の場合は、さらに家庭裁判所の遺言書検認証明書
- 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本または除籍謄本
- 被相続人の住民票除票
- 相続する人の住民票・戸籍謄本・委任状
- 固定資産評価証明書
遺言により法定相続人以外の受遺者が遺贈する場合の必要書類
- 登記申請書
- 遺言書正本(公正証書遺言以外の場合はさらに家庭裁判所の遺言書検認証明書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の住民除票
- 受遺者の住民票
- 被相続人の登記済権利証または登記識別情報
- 遺言執行者が家庭裁判所で選任されている場合は選任審判書の謄本
- 固定資産評価証明書
遺言により法定相続人以外の受遺者が遺贈する場合の必要書類(遺言執行者がいる)
- 登記申請書
- 遺言書正本(公正証書遺言以外の場合はさらに家庭裁判所の検認証明書)
- 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本または除籍謄本
- 遺言執行者の印鑑証明書
- 被相続人の住民票除票
- 受遺者の住民票
- 被相続人の登記済権利証または登記識別票
- 固定資産評価証明書
預貯金の相続手続き
預貯金の相続手続きの流れは以下の通りとなっています。
- 相続人調査(戸籍謄本・除籍謄本・改製原謄本の収集)
- 相続財産の調査・確認・評価(※残高証明書を発行してもらう)
- 遺産分割協議
- 相続人全員の署名・捺印・印鑑登録証明書を揃える
- 手続き代行(※金融機関によっては相続人の代表者の同席が必要な場合も)
- 手続き完了
- 相続税申告(相続税の申告が必要な方のみ)
預貯金の名義変更や解約など相続手続きの手順
預貯金の所有者が亡くなった場合、預貯金の名義変更や解約の手続きをするには、相続手続きが必要になります。
銀行(信託銀行・ゆうちょ銀行など)・信用金庫・信用組合などの金融機関では、故人の死亡を知るとその故人名義の口座を凍結され、入金・送金・引き出しはもちろん、公共料金などの自動引き落としも不可能になります。
故人名義の預貯金については、死亡した時点で故人が残した遺産=相続人の共有財産になるので、金融機関は遺産凍結を行い、遺産を守る措置をとります。
預貯金の名義変更または解約手続きは対象となる預貯金の口座がある金融機関ごとに行いますので、複数の銀行口座があるような場合は、すべての金融機関で手続きを行わなければなりません。
名義変更か解約かを選べますが、解約による払い戻しを選択するケースがほとんどです。
以下は預貯金の相続手続きの流れになります。
- ①相続財産の確認を行うために、金融機関に依頼して残高証明書を発行してもらう。
- ②相続人の調査を行う。被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本の収集を行い、遺産分割協議をする。
- ③相続する者が決まったら遺産分割協議書を作成する。
- ④相続人全員から印鑑証明書を取り寄せ、遺産分割協議書に実印を押印してもらう。
- ⑤遺産分割協議の成立後、預貯金の名義変更または解約手続きを行う。なお、手続きでは銀行の窓口に出向くことになります。
なお、手続きでは銀行の窓口に出向くことになります。
銀行によっては相続人の代表者が行かないといけないところや、専門家等の代理人でも対応してくれるところもあります。
また、全国どこの支店でも対応もしくは郵送での受付をしてくれるところもあります。
窓口での手続きは約1時間程度かかり、手続き完了まで2~3日のところから1か月かかる場合もあります。
預貯金手続きの必要書類
必要な書類は各金融機関によって異なりますが、一般的に必要な書類は以下のとおりです。
遺産分割協議により相続をする場合の必要書類
- 相続人全員の実印が捺された遺産分割協議書(相続人が1人の場合は不要)
- 相続人全員の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 預貯金通帳・キャッシュカード・証書等
- 金融機関所定の様式(預貯金払戻依頼書・預貯金名義書換請求書・解約申込書)
遺言により相続人または受遺者が相続(遺贈)する場合の必要書類
- 遺言書正本(公正証書遺言以外の場合はさらに家庭裁判所の検認証明書)
- 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本または除籍謄本
- 相続人または受遺者の印鑑証明書
- 預貯金通帳・キャッシュカード・証書等
- 金融機関所定の様式(預貯金払戻依頼書・預貯金名義書換請求書・解約申込書など)
有価証券の相続手続き
有価証券(株・投資信託・外貨預金・金等)の相続手続の流れは以下のとおりです。
- 相続人調査(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本の収集)
- 相続財産の調査・確認・評価(※残高証明書を発行してもらう)
- 遺産分割協議
- 相続人全員の署名・捺印・印鑑登録証明を揃える
- 手続き代行
- 手続き完了
- 相続税申告(相続是の申告が必要な方のみ)
株式等の有価証券の所有者が亡くなった場合、名義変更をするには相続手続きが必要です。
有価証券の場合は解約ではなくて名義変更となり、相続した者の名義の口座に移管することになります。
相続した者が口座を持っていない場合は、口座開設の手続きもあわせて必要になります。
なお、手続きに関しては、証券会社の窓口に行くことよりも郵送で対応しているところが多いです。
以下は有価証券の相続手続きの手順になります。預貯金相続の手続きの手順とほとんどが同じです。
- ①相続財産の確認のため、証券会社に依頼して残高証明書を発行してもらう。
- ②はじめに相続人の調査を実施。
- ③被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本を収集。
- ④遺産分割協議を行い、相続する方が決まったら同意書または遺産分割協議書を作成。
- ⑤相続人全員から印鑑証明書を取り寄せ、同意書または遺産分割協議書に実印を押印してもらう。
- ⑥遺産分割協議が成立した後、株式の取引口座の移管手続と株主名簿の名義変更手続きを行う。
有価証券の相続手続きの必要書類
株式の名義変更は、被相続人名義の株式が上場株式か非上場株式かによって手続きが変わります。
上場株式の名義変更の手続き
上場株式は証券取引所を介して取引が行われています。証券会社と相続する株式を発行した株式会社の両方で手続きをすることになります。
証券会社は顧客ごとに取引口座を開設しているので、取引口座の名義変更手続きを行います。
被相続人が上場株式など有価証券の取引のために開設した口座については、被相続人(遺言者)の取引口座がある証券会社に連絡し、被相続人の取引口座の内容を相続人の取引口座に移管する手続きが必要になります。
この場合、一般的に証券会社に次のような書類を提出します。
株式の権利を取得した特定の相続人が単独で移管を請求する場合
- 相続人全員の実印が捺された遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡前の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
- 取引証券会社所定の相続手続き関係書類
- 取引証券会社所定の取引口座開設関係書類
遺言により株式の権利を取得した特定の相続人(受遺者)が単独で移管を請求する場合
- 遺言書正本(公正証書遺言以外の場合は、さらに家庭裁判所の遺言書検認証明書)
- 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本または除籍謄本
- 移管を受ける相続人または受遺者の印鑑証明書
- 取引証券会社所定の相続手続き関係書類
- 取引証券会社所定の取引口座開設関係書類
- 株券(手元にある場合)
株式を発行した株式会社における手続き
証券会社で取引口座の名義変更手続きが終わったら、株式を発行した株式会社の株主名簿の名義変更手続きが必要になります。
この手続きは、証券会社が代行して手配してくれます。
その際相続人は、以下の書類を用意することになります。
遺産分割協議により株式の権利を取得した特定の相続人が単独で移管を請求する場合
- 相続人全員の実印が捺された遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
- 取引証券会社所定の相続手続き関係書類
- 取引証券会社所定の取引口座開設関係書類
遺言により株式の権利を取得した特定の相続人(受遺者)が単独で移管を請求する場合
- 遺言書正本(公正証書遺言以外の場合はさらに家庭裁判所の遺言書検認証明書)
- 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本または除籍謄本
- 取引証券会社の所定の相続手続関係書類
- 取引証券会社所定の取引口座開設関係書類
非上場株式の名義変更手続きは会社に直接問い合わせを
非上場株式の場合、取引市場がないので各々の会社によって行う手続きが変わります。
発行した株式会社に直接問い合わせましょう。
自動車の相続手続き
自動車の相続手続きの流れは以下の通りです。※手続きは申請したその日に完了します。
- 相続人調査(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本の収集)
- 遺産分割協議書の作成
- 相続人全員の署名・捺印・印鑑登録証明書を揃える
- 手続き代行
- 新しい車検証の交付
自動車の相続手続きの流れ
普通自動車の所有者が亡くなった場合、自動車の名義変更の手続きをするには相続手続きが必要になります。
自動車の相続手続きの流れは以下の通りです。
- 相続人の調査をする。
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本の収集を行う。
- 遺産分割協議がまとまったら遺産分割協議書の作成する。
- 相続人全員から印鑑証明書を取り寄せ、遺産分割協議書に実印を押印。
ここまでは他の相続手続きと手順は同じです。しかし、自動車の相続手続きは必要な書類が多く、それなりの時間がかかります。
したがって、使用の本拠が変わる場合には、車庫証明は1か月しか有効期間がないので、目途がついてから申請しましょう。
初期のうちに車庫証明を取り寄せてしまうと、いざ書類が揃った時にもう一度車庫証明を申請しなければならなくなってしまうからです。
また、相続人でない者が死亡した所有者の自動車を譲ってもらった場合は、いったん相続人代表者に名義変更の手続きを踏んでから、再度名義変更をします。
この場合は「ダブル移転」といって同時に手続きができます。
普通車の相続手続きの必要書類
普通車の相続手続きに必要な書類は、相続人が1人の場合と、複数の相続人のうち1人が相続する場合とでわずかに異なります。
相続人が1人である場合の必要書類
- 戸籍謄本・除籍謄本・改製権戸籍謄本(被相続人および相続人全員が記載のもの)
- 相続人の印鑑証明書(※発行されてから3か月以内のもの。未成年者については、住民票および特別代理人の印鑑証明書)
- 相続人の委任状(実印を押印)(新所有者と新使用者が違う場合は新使用者も添付)
- 自動車検査証(検査有効期限のあるもの)
- 申請書(OCRシート1号様式)
- 手数料納付書(登録印紙500円貼付)
- 車庫証明書(使用の本拠が変わる場合。※発行されてからおおむね1か月以内のもの)
- 自動車税申告書
- ナンバープレート(管轄が変わる場合に必要。※封印が必要なのでナンバープレートは取り外さず、車を持ち込む必要があります)
複数の相続人のうち1人が相続する場合の必要書類
※太字・・・相続人が1人の場合と異なる点
- 戸籍謄本・除籍謄本・改製権戸籍謄本(被相続人および相続人全員が記載のもの)
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印押印。未成年者がいるときは裁判所選任の特別代理人併記押印)
- 相続人全員の印鑑証明書(※発行されてから3か月以内のもの。未成年者については、住民票および特別代理人の印鑑証明書)
- 相続人(単独相続する者)の委任状(実印を押印)
- 自動車検査証(検査有効期限のあるもの)
- 申請書(OCRシート1号様式)
- 手数料納付書(登録印紙500円貼付)
- 車庫証明書(使用の本拠が変わる場合。※発行されてからおおむね1か月以内のもの)
- 自動車税申告書
- ナンバープレート(管轄が変わる場合に必要。※封印が必要なのでナンバープレートは取り外さず、車を持ち込む必要があります)
軽自動車の相続手続きの必要書類
軽自動車の所有者が死亡した場合の相続手続きは、普通自動車の相続手続きと比較すると簡単になっています。
なぜなら、被相続人および相続人全員の戸籍謄本・遺産分割協議書・印鑑証明書は不要になるからです。
- 申請書(OCRシート軽専用1号様式)
- 自動車検査証(検査有効期限のあるもの)
- 新使用者の住民票(※発行されてから3か月以内のもの)
- 申請依頼書(新旧所有者の認印押印)
- 軽自動車税申告書
- ナンバープレート(管轄が変わる場合に必要)
小型二輪・軽二輪の所有者が死亡した場合の手続き方法
小型二輪・軽二輪の所有者が死亡した場合の相続手続きは、普通自動車の相続手続きと比べて用意する書類が少ないので簡単です。
バイクを相続することになった場合、一度バイクを抹消(廃車)すれば、その後のバイクの名義変更をして他人に譲渡できます。
小型二輪(251cc以上のバイク)の抹消登録手続きの必要書類
- 申請書(OCRシート3号の2)
- 手数料納付書(350円の検査登録印紙貼付)
- 車検証
- 委任状(所有者の認印押印)
- 軽自動車税申告書
- ナンバープレート(バイクから外して持参)
軽二輪(126cc~250ccのバイク)の抹消登録手続きの必要書類
- 軽自動車届出済証返納届
- 軽自動車届出済返納証明書交付請求書
- 軽自動車届出済証
- 軽自動車税申告書
- ナンバープレート(バイクから外して持参)
財産別の名義変更手続きの流れと必要書類に関するまとめ
- 不動産の名義変更手続きを放置しておくと、後々必要書類を収集するのが大変になる
- 預貯金の名義変更または解約手続きは金融機関ごとに行う
- 有価証券の名義変更は、被相続人名義の株式が上場株式か非上場株式かによって手続きが異なる
- 普通車の相続手続きは必要書類が多いため、車庫証明の申請は書類が揃う目途がついてからが◎
以上、名義変更手続きの流れと必要書類について、財産の種類別に解説しました。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。