コラム

COLUMN
2021.11.12

【相続対策】小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、土地の評価額を80%下げることで大きな節税効果を期待できる制度のことで、要件に合うとこの特例を使うことができます。

土地を相続したのであれば必ず利用したい特例ですが、小規模宅地等の特例が適用される要件とは何でしょうか?

この記事では、小規模宅地等の特例について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。

小規模宅地等の特例の概要

亡くなった人が事業用や居住用に使っていた宅地を相続した場合、一定の要件のもと相続税評価額を減額できる制度を「小規模宅地等の特例」といいます。

土地に高い評価額がついて相続税の負担が大きくなりすぎることがあり、相続財産が自宅のみという人の場合、自宅を売却して納税することになってしまう可能性があります。

小規模宅地等の特例は、相続人の生活を脅かす状況に追い込まない為に設けられています。

要件を満たせば、自宅の宅地のうち330㎡まで80%も減額されます。

小規模宅地等の特例は節税効果が高く、適用できるなら必ず利用したいところです。

なお、小規模宅地等の特例を適用した旨を申告する必要があります。

小規模宅地等の特例を適用して仮に相続税がゼロになった場合にも、相続税の申告をしなければならないので注意しましょう。

小規模宅地等の特例の適用条件

たとえば、総面積500㎡の自宅の評価額が5000万円だったとしましょう。

この自宅が小規模宅地等の「特定居住用住宅地等」に該当すると、評価額は次のように評価されます。

①小規模宅地等の特例が受けられる330㎡の評価額を80%減額する

5000万円×(330㎡÷500㎡)×80%=2640万円

②もとの評価額から減額分を差し引く

5000万円×2640万円=2360万円

以上の計算から、小規模宅地等の特例の節税効果の大きさがよく分かります。

この特例が適用できるのは「事業用または居住用の宅地」です。

適用するためには、以下のいずれかに当てはまる相続人である必要があります。

  • ①配偶者
  • ②被相続人と生計を一(同居)にしていた親族

別居している場合でも、生活費を共にしていて休暇には一緒に過ごすなど、一部認められるケースもあります。

なお、

  • 「相続開始前3年以内に生前贈与された宅地等」
  • 「相続時精算課税制度を選択適用して生前贈与された宅地等」
  • 「いわゆる『個人版事業承継税制』を選択適用して生前贈与された事業用地等」

については、相続開始時点ではすでに民法上の相続財産ではありません。

たとえ相続税の課税価格を構成するものであっても、特例を受けることはできません。

減額される面積と減額の割合の計算方法

小規模宅地等の特例は、宅地等のうち一定の面積の部分を減額するというものです。

宅地がどう利用されていたかによって、減額できる面積と減額できる割合が定められています。

特定事業用宅地等

特定事業用宅地等とは、事業(貸付事業用宅地等に該当するものを除く)に利用していた宅地等のことで、次の要件にあてはまるものをいいます。

  • 被相続人の事業の用に利用していた場合・・・その宅地等で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつその申告期限までその事業を営んでいること
  • 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用に利用していた場合・・・相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること

なお、どちらの場合もその宅地等を相続税の申告期限まで有している必要があります。

特定同族会社事業用宅地等

法人の事業(貸付事業用宅地等に該当するものをのぞく)に利用していた宅地等で、相続税の申告期限までその法人の役員(法人税法第2条15号に規定する役員(清算人をのぞく))である被相続人の親族が相続または遺贈で取得したものです。

その宅地等を相続税の申告期限まで有している必要があります。

貸付事業用宅地等

不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業およびこれらに準ずる貸付事業を行っていた宅地等のことです。

  • 被相続人の貸付事業に利用していた場合・・・被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ申告期限までその貸付事業を行っていること
  • 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業に利用していた場合・・・相続開始前から相続税の申告期限まで、その貸付事業を行っていること

どちらもその宅地等を相続税の申告期限まで有していることが必要です。

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額割合
被相続等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 特定事業用宅地等に該当する宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用の宅地等 一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等 特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200㎡ 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等

特定居住用宅地等に該当する宅地等 330㎡ 80%

特例の適用を選択する宅地等が以下のいずれかに該当するかに応じて限度面積を判定します。

特例の適用を選択する宅地等 限度面積

特定事業用宅地等(①②)

および特定居住用宅地等(⑥)

(貸付事業用宅地等がない場合)

(①+②)≦400㎡

⑥≦330㎡

両方を選択する場合は合計730㎡

貸付事業用宅地等(③、④、⑤)

および

それ以外の宅地等(①、②、⑥)

(貸付事業用宅地等がある場合)

(①+②)×200/400+⑥×200/300+(③+④+⑤)≦200㎡

特定居住用住宅地等

被相続人の自宅として使っていた宅地等のことです。要件に該当する被相続人の親族が、相続や遺贈で取得した場合に適用できます。

宅地等が2つ以上ある場合は、特例が適用できるのは主として居住していた宅地等に限られます。

特定居住用住宅地の要件
区分 特例の適用要件
取得者 取得者等ごとの要件
被相続人の居住の用に供されていた宅地等 1 被相続人の配偶者 要件なし
2 被相続人の居住用に供されていた一棟の建物に居住していた親族 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつその宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること
3 上記1および2以外の親族

次の(1)~(6)の要件をすべて満たすこと

(1)居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと

(2)被相続人に配偶者がいないこと

(3)相続開始の直前に被相続人の居住の用の供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合にはその放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと

(4)相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと

(5)相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれのときにおいても所有していたことがないこと

(6)その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること

②被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等1被相続人の配偶者 

被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等 1 被相続人の配偶者 要件なし
2 被相続人と生計を一にしていた親族 相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつその宅地等を相続税の申告期限まで有していること

老人ホームに入居していた場合はどうなるのか?

たとえば、被相続人が晩年に要介護状態となって老人ホームに入居し、それまで暮らしていた被相続人名義の家が空き家の状態になっていた場合、特例の要件である「被相続人の居住の用」を満たすことができません。

このような場合、小規模宅地等の特例を使うことはできるのでしょうか?

実は、この要件には例外があり、老人ホームに入居していた場合は、元の住居を「特定居住用宅地等」として認められます。

認められるためには介護保険法で要介護認定、もしくは要支援認定を受けている必要があります。

また、入居先のホームにも条件があります。

  • ①老人福祉法第5条の2第6項に規定する認知症対応型唐人共同生活援助事業が行われる住居、同法第20条の4に規定する養護老人ホーム、同法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム、同法第20条の6に規定する軽費老人ホームまたは同法第29条第1項に規定する有料老人ホーム
  • ②介護保険法第8条第28項に規定する介護老人保健施設または同条第29項に規定する介護医療院
  • ③高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅(①の有料老人ホームを除く)

なお、障がい者の場合も一定の要件を満たすことで「特定居住用宅地等」と認められます。

小規模宅地等の特例のまとめ

  • 小規模宅地等の特例が適用される要件は「事業用または居住用の宅地」であり、相続人が配偶者もしくは被相続人と生計を一にしていた(同居など)親族であること
  • 減額できる面積と減額できる割合は宅地がどう利用されていたかによる
  • 老人ホームに入居していた場合、認定と入居先ホームの条件を満たすことで元の住居を「特定居住用宅地等」として認められることがある

以上、小規模宅地等の特例について解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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