建物が老朽化し、倒壊のおそれがあって取り壊してもらいたいのに所有者(相続人不存在)が既に亡くなっている、といったような場合はどうするべきなのでしょうか?
相続人が不存在の場合の財産管理・処分の手続きの流れを詳しく見ていきましょう。
この記事では、相続人不存在の財産の管理・処分はどうするのかについて、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
目次
相続財産管理人選任の申立て
相続人がいないからといって、亡くなった人の財産を自由に処分することはできません。
相続人のいない相続財産を管理・処分してもらいたいときには相続財産管理人の選任を申し立てましょう。
申立てが認められるためには、相続財産について法律上の利害関係を有していなければなりません。
たとえば、相続財産である建物が倒壊し、損害を被るおそれがある場合は、隣地所有者は相続財産に対して妨害の予防を請求する権利があるので、法律上の利害関係が認められることになります。
相続財産管理人による相続財産の管理について
相続財産管理人選任の申立てを受けた家庭裁判所は、管理開始要件を審理し、要件が満たされていれば相続財産管理人を選任します。
相続財産管理人による財産管理の概要
相続財産管理人は選任後直ちに相続財産の管理に着手し、申立人や関係者から相続財産を引き継ぎ、相続財産引継書を作成します。
その後、相続財産管理人は、債権者・受遺者に対する請求申出の公告および相続人捜索の公告を通じて相続人が不存在であることを確定し、相続財産法人に属する資産および負債を清算します。
残余財産は特別縁故者への分与および国庫に帰属することになります。
以下は相続財産管理報告書に必要な添付書類です。
作成書類 | 管理報告書 |
添付書類 |
・財産目録 ・管理金計算書 ・申立人および相続財産管理人の相続財産引継書 (その他各裁判所の定めによる) |
提出先 | 相続財産管理人を選任した家庭裁判所 |
家庭裁判所に対する逐次の報告
家庭裁判所は相続財産管理人に対し、監督処分命令として相続財産の状況・管理の計算を命じることができます。
これを命じられた相続財産管理人は、財産の状況・管理の計算の報告をしなければなりませんが、家庭裁判所の監督処分としての報告命令がなかったとしても、家庭裁判所に対して財産の状況・管理の計算の報告をするのが慣例となっています。
報告の時期について、
- 管理方法を変更したとき
- 管理清算手続をしたとき
- 相続財産の処分を受けた者へ財産を引き渡したとき
- 残存財産を国庫に引き継いだとき
など、相続財産の管理状況や管理計算に何らかの変更が生じ、報告事項が発生する度に管理状況報告書や計算書を提出するのが原則で、管理状況報告と計算報告を1つの報告として行うことも可能です。
相続財産管理人による相続財産の処分について
相続債権者に対する弁済や預金の解約は相続財産管理人の権限に属していますが、相続財産の処分は原則として権限外の行為とされています。
しかし、相続財産管理人が相続財産を清算するためには、相続財産を処分する必要があるため、相続財産管理人は家庭裁判所より権限外行為の許可を受け、さまざまな権限外行為を行います。
相続財産管理人は、相続財産を処分する前に家庭裁判所に権限外行為の許可を求める審判の申立てをします。
- 権限外行為の許可申立てが行われる例
- 財産の売却・贈与・廃棄・建物取壊し・契約解除・債権放棄・和解・寄附・永代供養料の支払・墓地の購入・訴訟提起等
相続財産の売却方法
債務弁済のために相続財産を売却する場合には、競売にかけなければなりませんが、競売では手続に時間がかかる上、売却価格も時価より低くなってしまいます。
そのため、実際に相続財産管理人が相続財産の競売を申し立てることはあまりなく、相続財産の売却には権限外行為の許可を受けて任意売却の方法をとることも多いです。
もっとも、任意売却の場合も売却価格は適正なものでなければならないため、家庭裁判所に不動産鑑定士による鑑定を求めるという方法もありますが、鑑定には費用と時間がかかるので、信頼できる不動産業者の査定や路線価・固定資産評価額などを資料として売却価格が決められるのが一般的です。
相続人不存在の財産の管理・処分はどうするかに関するまとめ
- 相続人のない財産を管理・処分してもらいたい場合には相続財産管理人の選任
を申し立てる - 相続財産管理人は相続財産を管理し、家庭裁判所に管理状況を報告する
- 相続財産管理人が相続財産を処分する場合には、家庭裁判所に権限外行為の許可
を申し立てる
以上、相続人不存在の財産の管理・処分はどうするのかについて解説しました。