父親の生前に認知を受けていないために、相続できないというケースがあります。
しかし、父親の死亡後3年以内であれば、裁判所に認知の訴えを提起し、認知させることができます。これを死後認知といい、非嫡出子の相続権を確保できます。
この記事では、死後認知について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
目次
死後認知の訴え
父の死後、非嫡出子が認知を受けるためには、死後認知の訴えを提起しなければなりません。
訴訟手続の中で親子関係の証明を行い、それが認められると認知の法的効力が発生します。死後認知の訴えの流れを詳しく見ていきましょう。
死後認知請求の要件
認知の訴えは、嫡出でない子と、その血縁上の父との間に、法律上の父子関係を認めてもらうことを目的とする訴えです。
真実の父に対して認知の訴えを提起するためには、嫡出推定される子(妻が婚姻中に妊娠した子を原則として夫の子と推定すること)は、嫡出否認(夫との間の子どもではないと認められること)の訴えを認められていなければなりません。
認知の方法には、以下の3通りがあります。
- ①父が任意にする任意認知
- ②審判でする審判認知
- ③判決でする強制認知
民法787条に基づく認知の申立ては、特殊調停事項であるとされています。
しかし、死後認知については、父が既に死亡していて合意が成立する余地がないので、強制認知となります。
死後認知における要件事実(法律効果が発生するために必要な事実)は以下のとおりです。
- ①自然の血縁的父子関係の存在
- ②法律上親子関係がないこと
親子鑑定はどのようにして行われるか
現在では、DNA鑑定等によって大体の親子関係を確認することができますが、死後認知の訴えではDNA資料を取得することが難しいため、鑑定ができないことがあります。
このような場合に、「内縁成立から200日経過後または内縁解消後300日以内に生まれた子であれば、特別な事情がない限り、内縁の夫の子と推定される」とした判例があります。
また、内縁中の懐胎子でない場合には、
- ①原告の母が受胎可能期間中に被告と継続的に性的交渉があったこと
- ②原告の母が被告以外の男と情交関係があった事情が認められないこと
- ③血液型が背馳しない
など、特別な事情がなければ原告が被告の子であると認めても構わないとされています。
また、容貌等の類似性が認められたり、父親らしい言動(親子らしい写真・手紙等)があったりしたことなども、親子関係があることの間接的証拠になります。
利害関係人は訴訟に補助参加できる
訴訟の結果に利害関係を有する第三者=利害関係人は、訴訟に補助参加できます。
裁判所は死後認知事件において、訴訟の結果により相続権を害される利害関係人を訴訟に参加させることができます。
また、訴訟記録上利害関係人の氏名・住所等が判明している場合は、訴訟が継続していることを通知します。
認知の法的効力
認知があると、親子関係が生じ親子関係に基づくすべての法的効力が出生のときにさかのぼって発生します。ただし、第三者の権利を害することはできません。
出訴期間の起算日について
死後認知の訴えは、父の死亡後3年を経過すると訴えを提起できなくなります。
しかし、判例は出訴期間の起算日に関して、「父の死亡の日から3年以内に認知の訴えを提起しなかったことがやむを得えず、認知の訴えを提起してもその目的を達することができなかっただろうと認められる場合、出訴期間は父の死亡が客観的に明らかになった時から起算すべきだ。」ともしています。
死後認知があったら遺産分割はやり直しなのか?
認知されていない子は原則として相続人ではありませんが、死後認知によって相続人となることがあります。
しかし、新たに相続人となった子がいる場合でも、遺産分割を既に終えている場合は協議をやり直す必要はありません。(遺産分割が完了していない場合は協議に参加できます)
死後認知を受けた相続人は、他の相続人に対して金銭のみの支払い請求をすることができるので、このようにして利害を調整します。
すでに完了している遺産分割は有効のままなので、相続登記の変更などの手続きをする必要はありません。
死後認知に関するまとめ
- 認知があると、親子関係に基づく法的効力が発生する
- 基本的に父の死亡後3年を経過すると原則として認知の訴えを提起できなくなる
- 死後認知によって新たな相続人が現れても、遺産分割が完了している場合は協議をやり直す必要はない
以上、死後認知について解説しました。