相続財産にはさまざまな種類があり、ゴルフ会員権もその中の1つです。
ゴルフ会員権は大まかに「預託金制」、「株主会員制」、「社団法人制」などに分けられます。
今回は、主に預託金会員制のゴルフ会員権の相続と預託金返還請求について詳しく見ていきましょう。
この記事では、
- 預託金会員制ゴルフクラブのしくみ
- 会員権の相続の取扱い
- ゴルフ会員権相続後の名義書換料
- 預託金返還請求の手続き
- 生前に会員権の売却・解約をする場合
について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
目次
預託金会員制ゴルフクラブの会員契約上の地位の相続
預託金会員制ゴルフクラブと、その会員権の相続における問題を説明していきましょう。
預託金会員制ゴルフクラブのしくみとは?
預託金会員制ゴルフクラブとは、ゴルフ場経営会社に対して一定金額の預託金を預けて入会した人が、施設を利用したり、年会費等を納めたり、会員としての権利義務を行使でき、一定期間の据え置き期間経過後、退会時に預託金の返還を受けるという形態のゴルフクラブです。
現在の日本のゴルフ会員権のほとんどがこの預託金制ゴルフクラブで、保証金制ともいわれています。
- 株主会員はプレー権と同時に経営・運営に関する議決権を得られます。
- 社団法人制は会員が自主的にクラブの運営を行う形をとります。
預託金会員制ゴルフクラブ会員権の相続と取扱いについて
結論から言ってしまうと、預託金制のゴルフクラブの会員権の譲渡は原則として自由ですが、会則の定めが置かれている場合はそれに従うことになります。
その理由を解説していきましょう。
預託金制ゴルフクラブ会員権の相続の問題としては、以下の2つが挙げられます。
- ①相続人が被相続人と同様にゴルフ場施設を利用することができる「ゴルフクラブ会員たる資格」を取得できるか?
- ②相続人が会員契約上の地位ないし会員権者たる地位(理事会の入会承認を条件に会員となることのできる地位)を承継できるか?
まず①の「ゴルフクラブ会員たる資格」については、理事会などの入会資格審査を経て、初めて付与されるものです。
その資格は当該会員の属性に着目するもので、一身専属的性格を有し、相続の対象とはならないと考えられています。
これに対し、②については、第1次的には会則の定めにより、会則上相続承継を否定し会員死亡により契約関係の終了を定める場合は相続しません。
会則が相続を肯定する定めを置くときや、相続に関する規定はなくても会員契約上の地位の譲渡を定める規定があるときには、相続します。
また、相続や会員契約上の地位譲渡について、規定がまったく無くても、債権譲渡自由の原則により譲渡は禁止されていないと解釈されています。
以上の問題2つを踏まえると、始めに述べたように「原則として会員権の譲渡は自由だが、会則の定めが置かれている場合はそれに従う」ことになるというわけです。
- ゴルフ会員権の譲渡については株主会員制も預託金制と同様ですが、社団法人制の多くは譲渡を認めていません。
会員契約上の地位の相続について
会員契約上の地位の相続が認められる場合、相続人は包括的な債権的法律関係(ゴルフ場施設の優先的利用権・預託金返還請求権・会費納入義務)を一体として相続し、相続人らが会員たる地位を準共有します。
遺産分割で特定の相続人が会員契約上の地位を取得し、理事会の入会承認を受ければ会員たる資格も取得することができます。
ゴルフ会員権相続後の名義書換料について
ゴルフ会員権を相続する場合は名義変更を行いますが、その際に名義書換料が必要な場合もあります。
ゴルフ場によりますが、名義書換料は10~100万円が相場といわれており、名義書換料は会員権そのものの額より高額な場合もあります。
名義書換の手続きの際には、被相続人の除籍謄本・遺産分割協議書・相続人全員の印鑑証明などの必要書類を提出することになります。
その後、ゴルフ場による相続人の入会審査が行われますが、会員権の相続の場合は入会審査を免除するゴルフ場もあります。
名義書換料の価格や必要書類、入会審査の有無等、ゴルフ場に確認するといいでしょう。
預託金返還請求の手続き
預託金返還請求は、退会によってはじめて可能となります。
預託金返還請求の手続きについて解説していきましょう。
死亡を理由とした預託金返還請求はできない
会員が死亡した場合、会則上特に預託金の返還請求を認めている場合を除いて、相続人が被相続人である会員の死亡を理由に、直ちに預託金返還請求権を行使して預託金の返還を求めることはできないとされています。
会員契約上の地位は預託金返還請求権のみならず、ゴルフ場施設の優先利用権、年会費納入義務等の債権的法律関係が一体となったもので、この中から預託金返還請求だけを取り出して単独で行使することはできません。
債権関係の一体となった契約上の地位を喪失したときに、はじめて預託金返還請求権を行使できる権利とされているからです。
退会によって預託金返還請求ができる
相続人としては、退会によってはじめて預託金返還請求権を行使することができます。
ただし、預託金の返還には据置期間が定められているので、この期間が経過していなければ、直ちに預託金の返還は受けることができません。
実際には、会員が死亡した場合、相続人は預託金の返還請求手続き、相続人の内1名への名義書換手続き、第三者への譲渡手続きの3つのうちいずれかの手続きを選択して行使しうる、と会則で定めるゴルフクラブが多いようです。
作成書類 | 預託金返還請求書 |
添付書類 |
被相続人の戸籍謄本・除籍謄本(戸(徐)籍全部事項証明書)および改製原戸籍謄本(出生から死亡までのもの) 相続人全員の戸籍謄本(出生から死亡までのもの) 相続人全員の印鑑登録証明書 |
提出者 | 会員契約上の地位を相続した相続人全員 |
提出先 | ゴルフ場経営会社 |
提出費用 | ゴルフ場経営会社の定めによる |
生前にゴルフ会員権の解約・売却を検討する場合は?
現在ゴルフ会員を所有している方で、利用頻度が低くなったり体力的な衰えを感じたりしたら、解約・売却を視野に入れて考えるといいでしょう。
そのまま会員権を所有し続けて将来相続が発生しても、名義変更や売却などの手続きにはかなりの手間が掛かるため、相続人の負担になりかねません。
会員権の売却をするとき、通常は会員権取扱い業者に依頼します。
会員権の価格は需給の状況によるため、仲介業者は1社だけ選びます。(複数の売りオーダーが出されると売却しなかった取扱い業者からの違約金が発生する可能性があります)
また、売却の際はゴルフ会員権取引業協同組合に加入している業者を選びましょう。
なお、ゴルフ会員権を売却した際の譲渡益は譲渡所得となるので確定申告が必要となります。
ゴルフ会員権の相続と預託金返還請求権のまとめ
- 預託金会員制ゴルフクラブの会員契約上の地位は相続することができるが、会
員の死亡を理由とする預託金返還請求はできない(退会により預託金返還請求をすることができる) - 名義書換料は会員権そのものより高額となる場合もある
- 生前にゴルフ会員権の解約・売却を検討することも考えるといい
以上、ゴルフ会員権の相続と預託金返還請求権について解説しました。