外国の土地などの海外不動産を相続する場合、どこの国の制度に従い、どのような手続きをとればいいのでしょうか?
海外不動産を相続する上での相続の準拠法と評価額、登記方法や相続税について、1つの事例をもとに詳しくチェックしていきましょう。
この記事では、海外不動産を相続する場合の手続きについて、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。
目次
どの国の法律に従う?相続の準拠法の決定
- 事例
- 日本人の夫と海外(韓国と米国)で生活をしていましたが、夫が亡くなり日本に住む娘と2人で相続をすることになりました。
- 夫の遺産の中に韓国と米国の土地建物があります。この土地建物の相続はどうなるのでしょうか?
海外(事例では韓国と米国)で生活していた日本人が死亡した場合、どの国の法律が適用されるかについては、「法の適用に関する通則法」36条によれば、「相続は、被相続人の本国法による」と定めています。
本事例でも被相続人が日本人であるため、相続について適用されるのは韓国や米国の法律ではなく、日本の民法になります。
日本の民法にしたがって、被相続人の所有していた海外不動産を含めた遺産はすべて相続人に承継されます。
本事例では妻2分の1・娘2分の1の割合になります。
作成書類 | 遺産分割協議書(相続人に海外居住者がいる場合) |
添付書類 |
相続人の印鑑登録証明書 海外居住者のサイン証明書(日本領事館に請求) |
海外不動産の評価額はどう決まるのか
不動産が日本にある場合、路線価などからおおよその客観的評価を得ることができます。
また、不動産業者に依頼して不動産の評価額を調査することも可能です。
しかし、不動産が海外にある場合、実際その不動産がどの程度の評価額なのかを知ることは難しい場合が多いでしょう。
日本以外の国では路線価等の指標もない場合が多いようです。このような場合、現地不動産鑑定士による価格評価がもっとも信頼性が高いでしょう。
日本での海外不動産の取扱いは近年とても増えています。
海外投資不動産について、国土交通省は日本人不動産鑑定士の鑑定評価手法のガイドラインを示しています(平成20年1月25日公表「海外投資不動産鑑定評価ガイドライン」)。
また、海外不動産投資を手がける日本企業も増えています。日本の不動産関係企業や海外不動産評価を行う不動産鑑定士に査定を依頼することも可能です。
在外邦人の証明書の発行
相続人が日本に住所を有しない場合、印鑑登録証明書は発行されません。
前述した事例でも、海外生活の長い母は印鑑登録証明書が発行されないでしょう。
このような場合、在外邦人は現地の日本領事館でサインが本人自身のものであるというサイン証明書を取得することができます。
日本領事館で、係員の面前で関係書類に署名・栂印をし、サイン証明書と関係書類をつづり合わせて割り印をもらいましょう。
米国の場合は公証人でも作成してもらえます。住所を証明する在留証明書も現地日本領事館で取得することができます(米国では公証人も作成可)。
共同相続における権利の承継の対抗要件
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分等を超える部分については、登記・登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができません。
相続によって取得した海外不動産の登記方法
実際に遺産分割が成立し、相続人が不動産を相続した場合は登記等でその権利関係を明確にしておく必要があります。
この場合、法の適用に関する通則法13条1項は「動産または不動産に関する物件及びその他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法による」と定めています。
本事例では、韓国の不動産は韓国法の、米国の不動産は米国法の登記法によって登記をしなくてはなりません。
海外資産の相続税納付と外国税額控除について
海外の財産に相続税がかかるかどうかは、被相続人や相続人の国籍・住所によって異なります。
以下の2点のいずれかに当てはまる場合は相続税の納税義務が発生します。
- 相続が発生したとき、被相続人または相続人が日本に住んでいた場合
- 相続が発生したとき日本にいないが、過去10年以内に被相続人または相続人が日本に住んでいた場合
ここで、海外ですでに相続税のような税金を支払った場合、日本で相続税が課されると二重課税となってしまうため、海外と国内の二重課税を防ぐための外国税額控除があります。
外国税額控除とは、被相続人の財産が海外にあり、その財産について外国で相続税のような税金を支払った場合は日本での税額が控除される制度のことです。
以下のいずれか少ない金額を相続税から控除することができます。
- 外国で支払った相続税に相当する税額
- 日本の相続税額×国外財産の価額÷相続財産の総額
海外不動産を相続する場合の手続きに関するまとめ
- 遺産分割協議書の作成にはサイン証明を取得する
- 海外に所在する不動産の登記は所在地の法律による
- 外国税額控除を利用することで二重課税を防ぐことができる
以上、海外不動産を相続する場合の手続きについて解説しました。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。