コラム

COLUMN
2021.12.22

【相続手続き】現物分割するのが難しい相続財産の分割方法とは

遺産をそのまま相続できる現物分割は最も分かりやすく、手続きも簡単な分割方法ですが、不公平な内容になりやすいというデメリットもあります。

現物分割をするのが難しい相続財産がある場合、トラブルを未然に防ぎつつ問題を解決していくにはどうすればいいのでしょうか?

この記事では、現物分割するのが難しい相続財産の分割方法について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

現物分割が難しい財産がある場合の問題点

現物分割とは、財産をそのまま相続する分割方法のことで、相続手続も簡単なものとなっています。

ただし、遺産には不動産や株式・美術品などの細かく分割しづらい財産も含まれるので、現物分割すると相続人間に不公平が生じやすいという問題も抱えています。

たとえば、現物分割によって相続人の1人が不動産を取得し、他の相続人はその不動産より価値の低い財産を取得することになれば、相続人の間で不公平感が生じ、トラブルに発展する可能性もあり得ます。

現物分割が難しい相続財産がある場合の分割方法と手続きについて、事例を基に説明していきましょう。

遺産分割方法の話し合い

事例

自転車修理・販売業をしていた父が死亡し、遺産として父名義の店舗兼自宅が残りました。

相続人は私と弟ですが、2人とも父の生前は父を助け家業を手伝ってきました。弟は家族を持ち、家を出ていますが、私は父と同居してきました。

私は店舗兼自宅をこのまま残し、弟と家業を続けたいと思っています。相続の手続はどうしたらよいのでしょうか。

遺言がある場合はそれに従うことになります。

遺言がない場合には、お互い納得した相続にするために、遺産分割方法について相続人間で協議することになります。

本事例でも共同相続人である弟に対して、遺産である店舗兼自宅の相続について話合いを持ちたいと協議の申入れをすることができます。

当事者の話合いで遺産分割ができた場合は、遺産分割協議書を作成しましょう。

もし、当事者間で協議がまとまらない場合は、共同相続人は家庭裁判所に分割の請求をすることもできます。

今すぐに遺産分割することが難しい場合は?

今すぐに遺産の分割をすることが非常に困難な場合は、当分の間、遺産分割を禁止することが考えられます。

遺産分割禁止は遺言、当事者の協議、さらには家庭裁判所の調停や審判によって行います。

本事例では遺言がないので、当事者の協議、協議がまとまらない場合には、遺産分割禁止の調停を申し立て、最終的に審判で遺産分割の禁止をします。

ただし、家庭裁判所が遺産分割禁止を認めるには「特別な事由」(遺産を当分の間分割しない方が、共同相続人全員にとって利益になると思われる特殊な事情)の存在が必要です。

要するに、相続人や相続財産の現状が今すぐ分割するのに適さない場合に、遺産分割禁止が認められるということです。

本事例のように、相続財産が営業施設、しかも相続人全員がその経営に従事している場合は、相続財産の状態が今すぐ分割するのに適さないとして特別な事由に当たると考えられるでしょう。

遺産分割禁止の期間と手続について

遺言による遺産分割禁止期間、共有物分割禁止期間との均衡から、遺産分割禁止の期間は5年とされています。

したがって、5年以内に遺産分割禁止の原因となった事由が解消されないのであれば、再度5年以内の分割禁止を申し立てることになります。

なお。遺産分割禁止を第三者に対抗するためには、登記が必要です。

遺産分割禁止の登記は、相続登記をした後、相続人全員による共有物不分割の特約を原因とする所有権の変更登記申請を行います。

代償金を支払う代償分割で単独の相続が可能

現物分割も換価による分割も困難な場合、相続人の1人に財産を相続させ、その代わりに他の相続人に対する債務を負担させる代償分割という方法があります。

本事例でも、居住している相続人が1人で店舗兼自宅を相続する代わりに、弟の相続分に相当する金銭(代償金)を支払う約束をすることができます。

ただし、代償分割をするには、相続をする人に代償金の支払能力があることが前提となっています。

この方法は、当事者間の遺産分割協議書でも可能であり、遺産分割調停であれば、調停調書に記載してもらいます。

遺産を現物で取得する相続人は、遺産分割の成立と同時に遺産の所有権を取得することができます。

代償金の支払を受ける相続人は、代償金債権を取得することになりますが、仮に不履行の場合でも、遺産分割協議の無効や解除を主張することはできません。

参考判例の紹介
・遺産の範囲について相続人間で争いがあり、その一部の財産について民事訴訟が係属しているというのみではいまだ民法907条3項にいう「特別の事由」があるとはいい難いとして、原審が遺産全部についてなした3年間の分割禁止の審判を取り消して差し戻した事例。
・家庭裁判所は、特別の事由があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の1人または数人に他の共同相続人に対し債務を負担させて、現物をもってする分割に代えることができるが、上記の特別の事由がある場合であるとして共同相続人の1人または数人に金銭債務を負担させるためには、当該相続人にその支払能力があることを要すると解すべきであるとされた事例。

現物分割するのが難しい相続財産の分割方法まとめ

  • 遺産分割については、遺言による指定がなければ相続人間の協議で決定する
  • 即時の分割が不能の場合、遺産分割禁止を申し立てることができる
  • 分割できない相続財産の場合、代償金を支払い、所有権を取得することができる

以上、現物分割するのが難しい相続財産の分割方法について解説しました。

相続手続き代行サービスはこちら

行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

CONTACT

まずはお気軽にご相談ください

電話で相談する
Tel.042-843-4211
メールで相談する
お問い合わせはこちら

(本社)東京都日野市豊田3-40-3 レジェイドサザンゲート1F

(新宿支店)東京都新宿区西新宿7-2-6 西新宿K-1ビル3F