Aさんは再婚相手に自宅や生活費などの財産を遺し、再婚相手の死後、実子に自宅などの財産を戻したいと考えていますが、再婚相手と実子には直接的な血族関係がないため、相続で財産を移転することはできません。
Aさんの希望通り財産を遺すには、どのような制度を利用すればいいのでしょうか?
この記事では、再婚相手の死後、実子に財産を戻す方法について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。
目次
再婚相手と再婚前の子どもとの相続権について
Aさんには死別した配偶者との間に子どもが1人います。現在Aさんは再婚していますが、再婚相手との間に子どもはいません。
Aさんは再婚相手のBさんに自宅や生活費などの財産を遺し、再婚相手の死後、実子Cさんに自宅などの財産を戻したいと考えています。
しかし、実子Cさんと再婚相手Bさんには直接の血族関係がないため、相続での財産の移転は認められません。
Aさんから相続した財産を、BさんからCさんに戻すためには
- BさんとCさんが養子縁組をする
- Bさんが「相続した財産はCさんに遺贈する」と遺言を作成する
といった方法が考えられます。
しかし、上記2つの方法はいずれもBさんの意思を尊重する必要があり、Aさんの意思だけで行えるものではありません。
そこで、Aさんの意思だけで行える
を活用する方法があります。
この2つの制度について順に説明していきましょう。
配偶者居住権制度を活用する方法
配偶者居住権制度とは、夫婦の一方が死亡した場合、残された配偶者が死亡した人が所有していた住居に終身もしくは一定期間、無償で居住することができる制度のことです。
たとえば、Aさんが実子Cさんのものとして居住用の土地と建物を遺したとしても、再婚相手のBさんは配偶者居住権によって自宅に住み続けることができるわけです。
Aさんが「Bさんに自宅の配偶者居住権を遺贈し、その敷地や建物に関してはCさんに相続させる」といった遺言を作成すれば、Bさんに自宅を遺し、Bさんの死後はCさんに戻したいと考えるAさんの望みを叶えることができます。
ここで注意しなければならない点が1つあります。
配偶者居住権は同居していた居住用の建物についてのみ設定できるものであり、収益物件や預貯金等の財産には適用できないという点です。
配偶者居住権について、より詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
信託制度を利用する方法
受益者連続型信託の利用の仕組みと、相続税について説明していきましょう。
受益者連続型信託の利用
もう1つの方法である信託制度とは、財産を所有するAさんが「委託者」となり、「受託者」に管理運用を任せ、その利益を受ける人を「受益者」として信託契約を結ぶ制度のことです。
相続させたい財産について信託契約を結んでおき、はじめはAさん自身が受益者となり、その後の受益者をBさんに設定しておきます。
こうしておけば、委託者であるAさんの死亡後、財産を引き継がせたい人(Bさん)が受益者となり、その財産の利益を取得することができるようになります。
居住用の土地・建物や賃貸土地・建物などについて信託財産とする信託契約を結び、Aさんの次に再婚相手Bさんを設定しておくことで、Bさんに自宅を遺せるというわけです。
相続後、受益者となったBさんは信託財産を自由に売却することはできませんが、自宅への居住や賃貸物件からの賃料を受け取ることができます。
Bさんは財産を相続したのと同様の状態になります。
Bさんの死後、受益権をCさんに引き継がせるよう定めておくことで、Aさんの財産は最終的にCさんへ移転することになります。
これを「受益者連続型信託」といい、受益者の死亡により順次受益者が連続し、信託契約から30年を経過した時点以降に新たに受益者となった人が死亡するまで、信託が継続します。
自宅以外の財産もまずはBさんに遺し、その死亡後にCさんに渡したいと希望するなら、受益者連続型信託を利用するのがいいといえるでしょう。
ただし、信託制度は、受託者を誰にするかや手続きが複雑などの問題もあります。
受益者連続型信託を設定した場合の相続税
受益者連続型信託を設定した場合の相続税について説明しましょう。
まず、受益権を取得したBさんはAさんから相続したとみなされるため、相続税がかかります。
次に、Bさんの受益権をCさんが取得した際には、Bさんからの受益権を遺贈したものとみなされるため、相続税がかかります。
財産が2回移転するので、相続税の計算上は2回にわたり順次相続した時と全く同じになります。
相続税が2重に課税され、予想外の増税になる心配はありません。
再婚相手の死後、実子に財産を戻す方法のまとめ
- 実子に居住用の土地・建物を相続させても、配偶者居住権によって再婚相手は自宅に住み続けることができる
- 配偶者居住権は同居していた居住用の建物についてのみ設定でき、収益物件や預貯金等は適用されない
- 自宅以外の財産もまず再婚相手に遺し、その後実子に渡す場合は信託制度を利用する
- 信託制度は受託者の設定や手続きが難しいという問題がある
以上、再婚相手の死後、実子に財産を戻す方法について解説しました。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。