多額の借金をしていた祖父の相続を放棄する予定だった父親が急逝してしまった場合、子には2重の相続問題が発生します。
このような状態を再転相続といいます。
子は父親の遺産を相続し、借金のみである祖父の相続を放棄したいと考えていますが、このような手続きは可能なのでしょうか?
この記事では、再転相続と相続放棄について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
再転相続と代襲相続の違いとは
再転相続とは、相続人が相続放棄をしないまま死亡した場合の相続のことです。
たとえば、祖父の遺産を相続する父親が、相続の承認または放棄をする前に死亡してしまった場合、本来の相続人である父の相続人=子が、相続の承認または放棄の権利を承継することになるわけです。
再転相続と代襲相続(相続人となる人が被相続人より先に死亡したり相続権を失ったりした場合に、相続人の子が代わりに相続人となること)は似ているので違いがよく分からないという方も多いかもしれません。
わかりやすく言うと、再転相続と代襲相続には、以下のように発生している相続の個数に大きな違いがあります。
相続の種類 | 状況 | 発生する相続の個数 |
再転相続 | 被相続人(祖父)の死亡後に相続人(父)が死亡している | 祖父と父の相続が2つ発生している |
代襲相続 | 被相続人(祖父)が死亡する前に相続人(父)が死亡している | 祖父の相続が1つ発生している(父の相続は終えている) |
ちなみに、被相続人と相続人が同時に死亡した場合、死亡した両者の間で相続が発生しないので、再転相続にはなりません。
再転相続の熟慮期間と選択権
再転相続が発生した場合、子は祖父の相続と父の相続2つの対して承認・選択をする権利があります。
子には以下の3つの選択が可能です。
- ①祖父の相続・父の相続の両方を承認する
- ②両方とも放棄する
- ③祖父の相続は放棄し、父の相続は承認する
しかし、「父の相続を放棄し、祖父の相続を承認する」ことはできません。
理由としては、父の相続を放棄すると、父から承継する祖父の相続についての選択権も承継しなかったこととなるからです。
父の相続を放棄すると、祖父の相続も放棄したことになるので、祖父の相続の手続きは必要なくなります。
なお、子は祖父の相続を放棄した後でも、熟慮期間内であれば父の相続を放棄することができます。この場合、既にした祖父の相続放棄が無効になることはありません。
再転相続における相続放棄の申述期間
申述期間は、子が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算します。再転相続における熟慮期間は3か月です。
- 祖父の相続について承認・放棄をする予定だった父の相続人(子)が、父から承認または放棄しなかった相続の地位を承継した事実を知った時をいうとされています。
再転相続と相続放棄についてのまとめ
- 再転相続と代襲相続では、発生している相続の個数に違いがある
- 父の相続を放棄すると、祖父の相続についての承認または放棄する選択権もなかったことになる
- 申述期間は相続の開始があったことを知った時から3か月間
以上、再転相続と相続放棄について解説しました。