相続人廃除が決まっていたけれど、その後の関係改善などによって相続人廃除を取消したいといった場合があります。
一度認められた相続人の廃除について、取消しを行うことはできるのでしょうか?
また、廃除取消しにあたり、どのような手続きが必要になるのか確認していきましょう。
この記事では、推定相続人廃除の取消しとその手続きについて、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
目次
推定相続人の廃除とは
被相続人が、自身に対する虐待や侮辱があった等の理由で、相続人(相続人になる予定の人)に相続させたくないと考える場合があります。
このような時、家庭裁判所への請求によって、その相続人の相続権を奪うことができます。
これを推定相続人の廃除といいます。
推定相続人の廃除が認められる一定の事由は以下の2つになります。
- 相続人が被相続人に虐待や重大な侮辱を行った場合
- その他の著しい非行があった場合
この2つのどちらか1つでも当てはまると、相続人の廃除が認められます。
推定相続人廃除の取消しと手続き
廃除取消しには、家庭裁判所へ申立てをすることで行います。
廃除取消しに必要な手続きについて説明していきましょう。
推定相続人廃除の取消しは自由に行える
相続人の廃除は被相続人の意思を尊重する制度です。
したがって、被相続人は、廃除の事由が消滅しない場合でも自由に廃除を取り消すことが可能です。
廃除取消しの理由は不要です。
廃除取消しを行う場合も、家庭裁判所に申立てをする必要があります。
家庭裁判所へ廃除取消しの申立てをする
廃除取消しには家庭裁判所へ申立てをしますが、被相続人が※成年被後見人(となるべき者も含む)・被保佐人・被補助人であっても自ら申立てることができます。
廃除取消しが被相続人の真意に基づくものであると確認された場合、取消しの審判がされます。
廃除取消しの審判申立てに必要な書類は以下の通りです。
必要書類 | 申立人および廃除対象者の戸籍謄本 |
費用 | 収入印紙800円、予納郵便切手 |
- 精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人のこと言います。
- 詳しくは成年後見制度の解説記事をご覧ください。
推定相続人廃除取消しの届出を提出する
申立人は、廃除取消しの審判が確定した日から10日以内に、確定証明書付の審判書謄本を添付して市区町村に推定相続人廃除取消しの届出を提出する必要があります。
推定相続人廃除をされた人の戸籍には、その旨が記載されます。
これで、廃除を取り消された推定相続人の相続権が回復します
相続人廃除の取消しの審判が確定する前に相続が開始した場合について
廃除の取消しの審判が確定する前に相続が開始した場合、相続財産をめぐる混乱を避けるため、家庭裁判所は遺産の管理に関する処分を命じることができます。
その詳細と流れを説明していきましょう。
遺産管理人選任によって廃除の取消しによるトラブルを防ぐ
被相続人が死亡した後に推定相続人廃除取消しの審判が確定すると、被相続人の死亡時にさかのぼって廃除の効力が生じます。
これによって生じる遺産の帰属や管理についてのトラブルを防ぐため、家庭裁判所は親族・利害関係人・検察官の請求によって、管理人の選任その他遺産の管理に必要な処分を命じることができます。
この処分は、廃除取消しの遺言があった場合は、廃除取消しの審判申立て前であっても申し立てることができます。
家庭裁判所によって遺産管理人選任の審判申立てが相当であると判断された場合、遺産管理人を選任します。
遺産管理人には必要に応じ、相続財産の封印・換価・処分禁止の仮処分などの処分を命じます。
廃除取消しの審判が確定後、遺産管理人選任処分の取消し審判を申し立てる
廃除取消しの審判が確定すると、相続人が相続財産を管理することができるので、遺産管理人による相続財産管理の必要がなくなります。
したがって、家庭裁判所は申立てもしくは職権により、遺産管理人選任処分の取消しの裁判をしなければなりません。
廃除対象となった相続人・遺産管理人・利害関係人は遺産管理人選任の処分をした家庭裁判所に取消しの審判を申し立てます。
廃除の審判が確定していると認められた場合は、遺産管理人選任その他の処分の取消しの裁判する必要があります。
推定相続人廃除の取消しとその手続きについてのまとめ
- 推定相続人廃除の取消しをする場合、被相続人は家庭裁判所に推定相続人の廃除の取消しの審判申立てを行う
- 推定相続人廃除の取消しの審判が確定したら、申立人は10日以内に届出を提出する必要がある
以上、推定相続人廃除の取消しとその手続きについて解説しました。