高齢化が進み、2012年時点で認知症を発症している人は462万人に上り、2025年には認知症になる人の数は約700万人、5人に1人になると見込まれています。(内閣府ウェブサイトより)
認知症を患い、判断能力が低下すると、相続対策を含めた法律行為が無効になってしまう可能性があります。
認知症は誰もがなりうる身近なものとなっているため、元気なうちから相続対策をしておく事が重要です。
この記事では、認知症になる前に行える相続対策と制度について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。
相続対策の事前準備に活用できる3つの制度
認知症になり、「意思能力がない」と判断されると、契約などの法律行為が無効になる可能性があります。
相続対策のために行った行為も無効となってしまうため、認知症になる前から相続対策をしておくことが肝心です。
認知症になる前にできる相続対策に活用したい制度は主に3つです。
民事信託、成年後見制度、生前贈与について説明していきましょう。
民事信託の利用
民事信託を利用することで、財産を管理する人(受託者)と本人(委託者)が信託契約を結ぶことで、財産を受託者に移転し、その管理・運用を任せることができます。
民事信託の大きなメリットは、認知症等によって委託者判断能力が衰えてしまっても、受託者が財産の処分等ができることです。
また、民事信託は遺言の代わり(遺言代用信託)に利用することもできます。
より詳しく知りたい方は、家族信託や遺言代用信託について解説した記事をご覧ください。
成年後見制度について
成年後見制度は、認知症等によって判断能力が不十分な成人が不利益を被らないように守る制度です。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度という2つの種類があります。
前述した民事信託と成年後見制度との大きな違いは、財産管理のみならず身上監護(介護・医療に関する契約締結)まで含まれる点です。
より詳しく知りたい方は、成年後見制度について解説した記事をご覧ください。
生前贈与と相続税対策の活用
生前贈与とは、生存している個人が、自分の意思で別の個人に無償で財産を渡すことです。
生前贈与を行うと、相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。
しかし、生前贈与の際に受贈者に贈与税が課税されるので、相続税と贈与税を計算し、どちらがより節税になるか確認しておく必要があります。
贈与者から受贈者が生前贈与を受ける際、相続時精算課税制度の要件を満たす場合は、以下のどちらかを選択できます。
暦年課税制度
受贈者が1月1日~12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えた場合、その超えた分に対して贈与税が課税されます。
相続時精算課税制度
60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫へ贈与する場合に選択することができます。
受け取った額の合計が2500万円を超えるまで、贈与税は課税されなくなります。
相続時精算課税を選択すると、暦年課税は利用できなくなります。
ただし、相続時には生前贈与額分を相続額に組み込んで相続税を支払う必要があるため、「税金の支払いを相続時に先送りする制度」とも言えるでしょう。
認知症になる前に行える相続対策と制度まとめ
- 民事信託を利用すると、認知症等によって委託者判断能力が衰えてしまっても受託者が財産の処分等をすることができる
- 成年後見制度を利用すると、財産管理のみならず身上監護(介護・医療に関する契約締結)も可能となる
- 生前贈与することで、相続税対策に活用できる
- 認知症になると相続対策を含めた法律行為ができなくなるので、元気なうちに備えておくことが大切
以上、認知症になる前に行える相続対策と制度について解説しました。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。