コラム

COLUMN
2022.06.27

【相続手続き】遺贈を放棄する方法

遺贈を受けたものの受遺者が遺贈を受けることを望まないという場合、遺贈の放棄をすることができます。

遺贈の放棄は、遺贈の種類によって放棄する方法が異なります。

遺贈の種類や放棄の方法について、詳細を見ていきましょう。

この記事では、遺贈を放棄する方法について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

遺贈は放棄することが可能

遺贈とは、遺言によって全部または一部の財産を一方的に与えるものです。

受遺者は相続人に限らず、誰でも指定することができます

被相続人から遺贈を受けたとしても、受遺者は遺贈を放棄することができます。

遺贈の放棄を考える際は、特定遺贈と包括遺贈とを分けて考える必要があります。

遺贈を放棄する方法について

遺贈の放棄は、特定遺贈か包括遺贈かで方法が異なります。

それぞれの違いを説明しましょう。

特定遺贈の放棄

特定遺贈とは、「〇〇市〇〇町にある土地をBに遺贈する」「現金100万円をBに遺贈する」といった、遺言者が有する特定の財産を遺贈するものを言います。

特定遺贈であれば民法986条1項により、受遺者は遺言者の死亡後、いつでも遺贈を放棄することができます。

放棄の意思表示は、遺言執行者に対して行います。

なお、特定遺贈の放棄は相手方のある単独行為によって行われるため、家庭裁判所に申述する必要はありません。

また、遺贈の目的物が複数存在しており、それが可分(分けられる)の場合には、遺贈の一部のみ放棄をすることも可能です。

ただし、遺贈の内容が「受遺者が遺言者に対して負担していた債務を免除する」ことにあれば、遺贈の放棄をすることはできないとするのが通説です。

特定遺贈の放棄に期間制限はありませんが、遺言者が遺言によって放棄の期間を定めていた場合は、その定めに従います。

特定遺贈の放棄の効果は、遺言者が死亡した時点までさかのぼって効力が発生します。

民法第968条
(遺贈の放棄)
第九百八十六条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
出典:民法|e-Gov法令検索

包括遺贈の放棄

包括遺贈とは、「相続財産の全部あるいは3分の1を遺贈する」といったように、分数的割合で示した一部を遺贈することを言います。

包括遺贈の受遺者は民法990条によって、相続人と同一の権利義務を有するとされています。

したがって、相続の放棄・承認のルールに則り、3ヶ月の熟慮期間、家庭裁判所での申述、放棄の遡及効(遺言者が死亡した時点までさかのぼって効力を発生すること)、法定単純承認が適用されます。

包括遺贈を放棄する場合は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

包括遺贈の一部のみ放棄することはできません。

負担付遺贈の放棄について

負担付遺贈の放棄があった場合、遺言によって遺言者の別段の意思が表示されていた場合を除き、負担の受益者はみずから受遺者になることができます。(民法第1002条第2項)

どういうことか、例を基に説明していきましょう。

ケース①
Aは次のような遺言を残して死亡しました。
「自分の経営する医院の施設として使用している建物を長女の夫である医師Bに譲るが、BはAの妻Cを終生介護し、生活の面倒を見ること」
しかし、医師Bはこの遺贈を放棄しました。

このケースでは、医師Bの遺贈の放棄により、負担の受益者である妻Cがみずから受遺者となり、医師Bの代わりに遺贈の目的物である建物の所有権を取得できます。

このとき、負担は民法第520条に従って消滅します。(受遺者は相続人に対して負担の履行を請求できるわけではありません)

民法第520条
第五款 混同
第五百二十条 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
出典:民法|e-Gov法令検索

遺贈の承認・放棄は撤回できない

遺贈の承認・放棄は、民法第989条により、一度意思表示をすると撤回することができません。

受遺者が遺贈を承認・放棄する前に急死した場合

遺贈の効力が発生した後、受遺者が承認・放棄の意思表示をすることなく死亡した場合は、財産的地位が相続分に従い、受遺者の相続人に承継されます。

ただし、遺言者が「遺贈の承認・放棄は相続人全員で共同してするように」「遺贈の目的物が複数ある場合は一括して承認・放棄するように」との意思表示をしている場合は、こちらに従います。

なお、「受遺者の相続人は遺贈を放棄してはならない」といったような、自己決定権の過度な制約となる意思表示は無効になります。

また、受遺者の相続人は、各自の相続分につき承認・放棄をすることができ、相続人が共同して行う必要ありません。

遺贈を放棄する方法まとめ

  • 遺言者による期間の指定がなければ、特定遺贈の放棄は遺言者の死亡後いつでも可能
  • 包括遺贈の放棄は相続のルールに従い、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要がある
  • 一度意思表示をすると遺贈の承認・放棄の撤回は不可能
  • 受遺者が遺贈の承認・放棄をする前に死亡した場合は、受遺者の相続人が財産的地位を承継する

以上、遺贈を放棄する方法について解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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