遺贈は遺言によって行われ、相続人以外の人にも財産を渡すことができます。
遺言が無効になれば遺贈が無効になるのはもちろんですが、遺言を作成した時に想定していた状況であるとは限らず、状況によっては遺贈が無効となる可能性もあります
遺贈の無効・取消し・失効する場合と、その時の財産の帰属先について確認していきましょう。
この記事では、遺贈の無効・取消しと財産の帰属について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
目次
遺贈が無効になるケースとは
遺贈の無効・取消事由には、遺言自体が無効になる場合と、遺贈に特有の無効事由があります。
それぞれのケースについて説明しましょう。
①遺言の無効・取消しがあれば遺贈も無効となる
遺贈は遺言によって行われます。
遺言が方式に則っていなければ、遺贈も無効となります。
また、民法第966条による無効も適用されます。
それから、遺言の取消し・撤回があった場合も無効となります。
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(被後見人の遺言の制限)第九百六十六条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。(以下省略)出典:民法|e-Gov法令検索
②遺贈に特有の無効事由
遺言者が死亡する前に受遺者が死亡した場合
遺言者が死亡する以前に受遺者が死亡した場合、遺贈の効力は発生しません。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
停止条件が成就する前に受遺者が死亡した場合
たとえば、「自分の死後、妹が婚姻したときに建物を妹に譲る」といった、停止条件付遺贈についての遺言が残されたとしましょう。
妹が独身のまま死亡(条件が成就する前に受遺者が死亡)した場合、遺贈は無効となります。
遺贈の目的物が相続財産に属さない物と判明した場合
「土地をXに譲る」との遺言が残されたものの、実はその土地が贈与者の持ち物ではなかったことが判明した場合、遺贈は原則として無効となります。
また、「〇〇をXに譲る」との遺言が残されたものの、遺贈者の死亡時点で、遺贈者の財産の中にその目的物が存在していなかった場合も同様です。
遺贈者は目的物を所有しているからこそ遺贈できます。
他人の所有物であった場合、これを取得してまで受遺者に与えることは通常ありません。
なお、例外として遺贈が有効になるケースがあります。
たとえば「兄の所有物である土地を、自分が死亡した時にXに与える。相続人たちは兄から土地の所有権を取得し、Xに移転すること。」とした遺言が残されたとしましょう。
遺贈の目的物が相続財産に属するかどうかにかわらず、遺贈者が、遺贈の「目的」としたものと認められるとき遺贈は有効になります。
ただし、例外として認められるには、遺贈者が財産を所有しているかどうかにかかわらず、目的物の所有権を他人から取得し、これを受遺者に移転する意思が遺言で明らかになっていなければなりません。
遺贈が無効・失効した場合の財産はどうなるのか?
民法第995条に従い、遺言自体が有効でも、遺贈がなんらかの理由で無効または放棄による失効となった場合、受遺者が受けるべきだった財産は相続人に帰属します。
ただし、遺言者が別段の意思を遺言で示していた場合は、その意思に従います。
なお、負担付遺贈(遺贈者が受遺者に対して相続させる代わりに一定の義務を負担させる遺贈)が放棄された場合は、負担の受益者が受遺者に変わって遺贈の目的物を取得できます。
このとき、負担は※混同(民法第520条)により消滅します。
※混同とは?(民法第520条)
- 第五款 混同
- 第五百二十条 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
- 出典:民法|e-Gov法令検索
遺贈の無効・取消しと財産の帰属まとめ
- 遺贈の無効には、遺言が無効になるケースと、遺贈に特有の無効事由に該当するケースがある
- 遺贈がなんらかの理由で無効・失効となった場合、遺言に別段の意思が示されていなければ財産は相続人に帰属する
以上、遺贈の無効・取消しと財産の帰属について解説しました。