配偶者居住権とは、残された配偶者が亡くなった人の所有していた建物に居住していた場合に、賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利を言います。
配偶者居住権の消滅事由には、配偶者の意思による放棄や死亡による消滅の他、さまざまなものがあります。
また、配偶者居住権が消滅した後の権利・義務の説明にも触れていきましょう。
この記事では、配偶者居住権の消滅事由とその後の権利・義務について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
目次
配偶者居住権の消滅事由について
配偶者居住権の消滅事由は、次のとおりです。
①存続期間の満了
配偶者居住権の期間満了による使用貸借権の終了です。(民法597条第1項〈期間満了等による使用貸借の終了〉の準用)
②配偶者の死亡
配偶者居住権は、配偶者の居住権を保護するための権利に過ぎず、相続の対象とはなりません。
したがって、配偶者居住権の存続期間内に配偶者が死亡した場合、配偶者居住権は消滅します。
③居住建物の全部滅失
建物の全部が滅失し、使用・収益をすることができなくなった場合、配偶者居住権は消滅します。(民法616条の2〈賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了〉の準用)
④居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合
混同(民法520条)による配偶者居住権の消滅です。
ただし、第三者と持分を共有する場合、配偶者居住権は消滅しません。(民法1028条2項)
民法520条
- 第五款 混同
- 第五百二十条 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
- 出典:民法|e-Gov法令検索
⑤配偶者が配偶者居住権を放棄した場合
配偶者居住権は、配偶者の意思によって放棄することができます。
⑥配偶者居住権の消滅請求がなされた場合
- 配偶者が用法遵守義務違反
- 配偶者居住権の譲渡
- 居住建物を無断で増改築
- 第三者に使用・収益させた
配偶者が上記のいずれかに該当した場合、居住建物の所有者は配偶者に相当の期間を定めて違反の是正を催告し、期間内に是正されない場合には、配偶者居住権の消滅させることができます。
配偶者居住権が消滅した後の権利・義務の発生
配偶者居住権が消滅した後、配偶者に生じる義務と権利について説明していきましょう。
配偶者居住権が消滅した後の義務
配偶者の配偶者居住権が消滅した後は、下記の義務を負うことになります。
①居住建物の返還義務
配偶者居住権の消滅後は、居住建物の返還をしなければなりません。
しかし、配偶者が居住建物の共有持分を有する場合、居住建物の共有者は配偶者居住権の消滅を理由に返還を求めることはできません。(民法1035条第1項)
②居住建物の原状回復義務
配偶者は①居住建物の返還をする時、相続開始の後に生じた損傷(通常使用によって生じた損耗や経年劣化を除く)を、相続開始時の状態に回復させなければなりません。
ただし、損傷が配偶者の故意・過失によるものでない場合は、この限りではありません。(民法1035条第2項による第621条〈賃借人の原状回復義務〉の準用)
③相続開始の後に居住建物に附属させた物を収去する義務
配偶者は建物の返還をする時、相続開始の後に居住建物に附属させたものを収去させなければなりません。
ただし、居住建物から分離することができないか、分離に過分の費用を要する物については、この限りではありません。(民法1035条第2項による第599条第1項)
配偶者居住権が消滅した後の権利(収去権)
配偶者は居住建物を返還する時、居住建物に附属させたものを収去することができます。(民法1035条第2項による第599条第2項)
配偶者居住権が消滅した後の権利・義務の承継
配偶者居住権の消滅が配偶者の死亡による場合、配偶者居住権の消滅後に生じる①~③の権利・義務は、配偶者の相続人が相続によって承継します。
配偶者居住権の消滅事由とその後の権利・義務まとめ
- 配偶者居住権の消滅事由は6つ
- 配偶者居住権の消滅後、居住建物の返還・原状回復・附属させた物を収去する権利・義務が生じる
以上、配偶者居住権の消滅事由とその後の権利・義務について解説しました。