先代経営者の死亡や退任による事業承継、M&Aによる他社経営の承継には、相続税・贈与税の負担や事業用資金の調達、株式の取得等さまざまな使途の資金が必要です。
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律=経営承継円滑化法には、都道府県知事の認定を受けることで、中小企業の事業承継に係る資金の調達の支援を受けられる金融支援制度があります。
この記事では、経営承継円滑化法の金融支援制度の概要について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。
目次
経営承継円滑化法による金融支援制度
先代経営者が死亡して後継者が事業を承継する場合、親族内承継なら相続税の納付や事業用資産・株式の分散防止のための買取資金が必要です。
親族外承継であれば、先代経営者の相続人等からの株式取得のための資金が必要となることがあります。
M&Aによる他社経営の承継の場合、現経営者から株式等を買い取るために資金を必要とします。
このように、事業承継では多額の資金が必要になります。
経営承継円滑化法の金融支援制度では、支援を必要とする資金の使途や対象者に応じて
- 「信用保証による支援」
- 「融資による支援」
の2つの支援形態による特例が用意されています。
いずれも事業承継税制の適用とは別に、都道府県知事に認定申請書を提出し、認定を受ける必要があります。
経営承継円滑化法の金融支援とは?
経営承継円滑化法の金融支援制度の概要、「信用保証による支援」、「融資による支援」、「信用保証と融資の両特例の併用」について説明しましょう。
信用保証による支援
会社(個人事業主)が経営承継円滑化法に基づく認定後、金融機関から資金を借り入れる場合、信用保証協会の保証枠について、通常の保証枠とは別枠(以下表)が用意されています。
通常枠 | 別枠 |
普通保険【2億円】 | +2億円 |
無担保保険【8000万円】 | +8,000万円 |
(特別小口保険【2000万円】) | (+2,000万円) |
また、会社の代表者や会社を営んでいない個人には、特例により通常の保証枠が用意されています。
融資による支援
会社の代表者や事業を営んでいない個人は、経営承継円滑化法に基づく認定後、日本政策金融公庫又は沖縄振興開発金融公庫の融資制度を利用することができます。
例えば日本政策金融公庫の場合、融資限度額は国民生活事業が別枠7,200万円(うち運転資金4,800万円)、中小企業事業が直接貸付7億2千万円、利率は所定の利率が適用されます。
信用保証と融資の両特例の併用について
先述した信用保証と融資の両特例を併用することができます。
また、信用保証と融資のそれぞれにおいて、複数の資金使途について併用することが可能なケースもあります。
都道府県知事の認定を受ければ必ず支援を受けられるわけではないので、事前に日本政策金融公庫、信用保証協会に相談するといいでしょう。
金融支援の3つの分類
経営承継円滑化法における金融支援は、以下のように大きく3つの類型に分類されます。
必要となる資金の類型 | 支援の対象者 | 支援形態 | |
融資 | 信用保証 | ||
経営を承継した後に必要となる資金 【例】 ・後継者が自社の株式や事業用資産を買い取るための資金 ・後継者が相続や贈与によって自社の株式や事業用資産を取得した場合の相続税・贈与税の納税資金 ・仕入先の取引条件や取引金融機関の借入条件が厳しくなったことにより必要となる資金 |
中小企業者 | 〇 | |
中小企業者の代表者[会社] | 〇 | 〇 | |
これから他の中小企業者の経営を承継するにあたり必要となる資金 | (これから他の中小企業者の経営を承継しようとする)中小企業者 | 〇 | |
(これから他の中小企業者の経営を承継しようとする)事業を営んでいない個人 | 〇 | 〇 | |
認定日から経営の承継の日までの間に、現経営者の保証が付されている借入れを借り換えるための資金(経営者保証は不要) | 中小企業者[会社] | 〇 |
経営承継円滑化法による金融支援制度の概要まとめ
- 経営承継円滑化法の金融支援制度では、信用保証による支援と融資による支援の2つがあり、適用には都道府県知事の認定が必要
- 信用保証と融資の両特例を併用することが可能なケースもある
以上、経営承継円滑化法の金融支援制度の概要について解説しました。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。