生前にできる相続対策には、遺言書の作成をはじめ色々な準備がありますが、財産の情報を家族と共有することも大切な準備の1つです。
どのような財産がどこに保管されているのか、共有すべき情報は財産の種類によって多種多様です。
自らの死後、家族の手間や手続きの負担を軽減できるように財産の情報共有の仕方について確認しておきましょう。
この記事では、生前に家族と共有すべき相続財産の情報とは何かについて、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
目次
生前の相続対策として財産の情報を共有したほうがいい理由
生前にできる相続対策には生前贈与、遺言書の作成や節税対策等が挙げられますが、相続人となる家族に財産の情報を伝えておくことも大切です。
財産の内容を「見える化」する
相続人は相続の開始後にどのような財産が遺されているか調査する必要があります。
しかし、どのような財産があったか把握するのは大変な事なので、家族である相続人たちに分かるように財産を「見える化」しておきましょう。
財産の全体像や相続税に関しての情報を伝えておくことで、後に遺される家族のために余計な手間や手続きの負担を軽減することができます。
また、財産の内容だけでなく保管場所も伝えるようにしておきましょう。
相続人が財産をすぐに使えることができるからです。
伝えておくべき情報は財産の種類によって異なる
財産というと、どのようなものが思い浮かぶでしょうか?
現金、預貯金、有価証券、不動産をはじめ、書画や骨董などの美術品、自動車や耐久消費財(家電等)。
さらに、財産にはマイナスの財産も計上するので借入金やクレジットカードの未払いといったものも含まれます。
預貯金はどの銀行にいくらあって、通帳や届出印はどこにあるのか、キャッシュカードの暗証番号、ネット銀行を利用している場合はログインIDやパスワードも分かるように準備しておきましょう。
現金や貴金属、生命保険証証書、不動産の登記書類、ゴルフ会員権やリゾート会員権の証書などを自宅の金庫に入れている場合、「存在」の情報だけでは不十分です。
金庫のカギの「保管場所」と「財産の存在」がセットで伝わるようにすることが肝心なのです。
生前の財産整理・手続きは、財産の洗い出し作業から始まります。
この時に、不要な口座やカード類は整理するといいでしょう。
家族に伝えておくべき財産の情報リスト
財産の種類 | 伝えておくべき情報 |
現金 | 保管場所、金庫のカギ等 |
預貯金 |
●取引のある金融機関名、支店名、種類、口座番号 ●預貯金通帳・届出印・実印・キャッシュカード・定期預金証書の保管場所 ●キャッシュカードの暗証番号 ●ネット銀行の銀行名、ログインID、パスワード等 |
有価証券 |
●証券会社名、支店名、連絡先 ●取引残高報告書、現物の場合は保管場所 ●ネット証券のログインID、パスワード等 |
生命保険 |
●保険会社名、支店名、連絡先、受取人 ●保険証券の保管場所(年金保険・損害保険・災害保険・医療保険なども同様) |
公的年金 |
●基礎年金番号、年金手帳・年金証書の保管場所 ●年金受取り口座のある金融機関名・支店名等 |
動産 | ●宝石・貴金属、書画・骨董、自動車・自動二輪車、耐久消費財等 |
不動産 |
●所在地、種類、面積、評価額 ●権利証、公図、測量図、登記簿謄本、全部事項証明書 ●賃貸物件の場合は賃貸借契約書の保管場所 ●固定資産関係の評価明細書、購入時の売買契約書の保管場所等 |
会員権など | 会員権の種類、会員証書の保管場所等 |
借入金などマイナスの財産 | 借用書または契約書の保管場所、返済予定表等 |
クレジットカード | カード会社名、暗証番号、引落し口座、取引明細等 |
その他 | エンディングノート、遺言書等 |
意外なものまで財産に含まれる?財産の情報を整理する上での注意点
家族のために財産の情報を整理する上で、財産として見落としがないように気を付ける必要があります。
どういったものが家族と情報を共有すべき財産なのか説明しましょう。
金銭に見積もることができるものは財産に含まれる
もしかしたら、ご自身の財産には預貯金しかないと思っている方もいるかもしれません。
しかし、相続の視点から見れば宝石や骨董品、土地・家屋などの不動産の権利、有価証券、著作権、貸付金など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるもの全てを財産として書き出しておく必要があります。
経済的価値のあるもの |
|
現金・有価証券 | 現金、預貯金、有価証券、貸付金、小切手等 |
動産 | 自動車、オートバイ、骨董品、美術品、宝石、貴金属、家具や家電などの家財等。※取得価格20万円以上、または現在価値10万円以上程度が目安。 |
不動産 | 宅地、建物、農地、山林、店舗等。不動産に存する権利として所有権(分譲マンションの場合は区分所有権)、借地権、地上権等。 |
その他 | ゴルフ会員権、慰謝料請求権、損害賠償請求権、著作権、特許権、商標権等。 |
みなし相続財産も忘れないように注意
上記の表で紹介したものの他に、相続財産として見なされる資産=みなし相続財産のことを忘れないように注意しましょう。
例えば、
- 死亡保険金
- 死亡退職金
- 死亡の3年前までに相続人へ贈与された財産
などがみなし相続財産として挙げられます。
ちなみに、年金受給権や養育費の請求権、先祖をまつる祭祀財産(仏壇・仏具・お墓等)は相続財産として課税されません。
しかし、家族の手続きの負担を考えれば、課税・非課税に関係なく伝えておくことをおすすめします。
マイナスの財産の情報も共有すべきなのか
マイナスの財産の相続に関わってくるため、マイナスの財産の情報も家族と共有するようにしましょう。
預貯金や不動産などの「プラスの財産」に対して、借入金・未払い賃金・未納の税金・住宅ローン残債・クレジットカードの未払い金などは「マイナスの財産」です。
マイナスの財産は相続税の計算上、相続財産から差し引くことができます。
水道光熱費などの公共料金や携帯電話などの通信費の未払金も同様です。
通信販売の定期購入、サブスクリプション・サービス(定額で商品や動画等のサービスを利用できる)の利用しているなら、契約先や金額のリストアップをしましょう。
連来保証人としての保証債務も、必ず家族に伝えておきます。
できるだけ早く保証相手と交渉して解約できることが望ましいでしょう。
財産目録を作成すれば簡単に財産を把握できる
家族と財産の情報を共有するためには、自分がどんな財産を持っているのか、どのくらいの経済的価値があるのか把握しなければなりません。
そこで、財産目録を作成して財産状況を把握することをおすすめします。
財産目録を作成して一覧表にすれば、簡単に財産状況を洗い出すことができるからです。
少々時間がかかるものの、預貯金の休眠口座、使っていないクレジットカードまで洗い出し、すべての財産をリストアップしましょう。
なお、財産の状況は年々変わっていきます。
できれば1年に一度、定期的に更新できるようにするといいでしょう。
生前に家族と共有すべき相続財産の情報とは何かについてのまとめ
- 家族と財産の情報を共有することで、遺された家族の手続きの負担を軽減することができる
- 情報共有にあたり、自分の財産を洗い出して不要な口座等を整理することができる
- 見落としがちな経済的価値のある財産やみなし相続財産の情報共有も忘れないように気を付ける
- 借入金や未払金の情報も共有することが重要
- 財産目録を作成して財産状況を把握する
生前に家族と共有すべき相続財産の情報とは何かについて解説しました。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。