年々増加傾向にある相続トラブルですが、遺産額が少ないほど相続トラブルが生じやすいという司法統計年報のデータにもあり、どの家庭も他人事では済まないかもしれません。
相続トラブルによくある原因として
- ①想定外の相続人がいる場合
- ②遺産分割協議がうまく進まない
- ③相続税に関する問題
があります。
この中でも、①と②について一般的な事例を交えて説明したいと思います。
また、相続トラブルを回避するためには遺言を作成することが大切なので、相続で揉めそうな場合におすすめの遺言の種類を紹介します。
よくある相続トラブルの原因と、相続で揉める人と揉めない人の違い、相続トラブルの回避の方法を解説していきましょう。
この記事では、よくある相続トラブルの原因と回避の方法について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。
※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。
目次
よくある相続トラブルの原因とは?
一般的に、相続に関するトラブルによくある原因として次の3つが挙げられます。
- ①想定外の相続人がいる場合
- ②遺産分割協議がうまく進まない
- ③相続税に関する問題
①想定外の相続人がいる場合
次のような事情が発生したとき、誰が相続人になるかトラブルが生じることがあります。
- 家族が把握していなかった相続人の存在(非嫡出子)が判明する
- 相続人であるはずの人がその資格を失ってしまう(相続欠格・相続人の廃除)
ここで、想定外の相続人が判明した場合のよくある事例を紹介しましょう。
よくある事例 | 内容 |
①被相続人の死亡後に婚外子がいたことが判明した場合 |
父が死亡した時点で、母がすでに死亡しており、相続人が子2人のときには、相続人が子2人に確定するのが原則です。 しかし、後から父に婚外子(非嫡出子)がいたことが判明すると、相続人としての子が1人増えるので1人あたりの相続できる遺産の割合が減ることになります。 |
②被相続人に配偶者も子もいない場合 |
配偶者も子もいない人が死亡した場合、その被相続人の親が相続人となります。 しかし、後から被相続人に子がいたことが判明すると、親は相続人としての資格を失ってしまいます。 |
以上のように、相続人同士の関係が複雑だったり、相続人の人数が多かったりする場合は相続トラブルが生じやすくなるので、以下のようなケースに当てはまったら注意しましょう。
- 被相続人に離婚歴がある場合
- 前妻との間に子がいる場合
- 認知している隠し子がいる場合
- 実子以外に養子縁組をした子がいる場合
なお、遺産相続の手続きにおいては、戸籍謄本等を集めることにより誰が相続人になるのかを確定させる作業(相続人の調査)を行う必要があります。
この時に被相続人の家族が把握していなかった法定相続人の存在を知ることもあり得ますので、手間と時間が掛かりますが、相続人調査を避けることはできません。
- 遺産分割に無関係の人(相続欠格や廃除、相続放棄によって相続権を失った人)が含まれている場合は、無関係の人に対する遺産分割の効力が否定されるので、この人に配分した相続財産についてのみ遺産分割協議をやり直すことになります。
- 一方、相続人に含まれるべき人を含めないで遺産分割した場合は無効になるので、遺産分割をやり直すことになります。
②遺産分割協議がうまく進まない
法定相続人を問題なく確定できたとしても、相続人同士で遺産をどのように分けるかという話し合い(遺産分割協議)がうまく進まないケースがあります。
たとえば、最も相続トラブルに発展しやすいのは不動産の相続です。
不動産は複数の相続人で公平に分割するのが難しいため、不動産が相続財産を占める割合が高いほどに話し合いで揉める可能性が高くなっていきます。
遺産の換金や名義変更には、基本的に相続人全員が実印を押印した書面(遺産分割協議書)が必要となるため、相続人同士の協議がまとまらない場合はスムーズに相続手続きを進めることができません。
ただし、被相続人が遺言を残していた場合は遺言に記載されている内容に従って遺産を分けることになるので、遺産分割に関するトラブルは生じにくくなります。
- 遺言がない場合の遺産分割が話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に調停や審判を申し立てる必要があります。
- こうなると解決まで時間がかかるので相続人の負担は大きくなるといえます。
- 遺産分割協議がまとまらない場合の詳細はこちら
③相続税に関する問題
相続人が実際に遺産を取得した場合、基礎控除額を超えると相続税の納付が必要となります。
不動産をはじめ、高額な財産を相続したときは、相続税の額も比例して多くなるので、遺産分割においては相続税についても考慮が必要となります。
遺産額が少ないと相続トラブルになりやすい?
相続トラブルは資産家の問題で自分には無関係と考えている人も多いかもしれませんが、そんなことはありません。
実は、裁判所に持ち込まれる相続トラブルの約3割が遺産額1,000万円以下で発生し、資産5,000万円以下で起こるケースは約4割に上ります。(2019年度『司法統計年報』)
両方を合わせると全体の相続トラブルの約7割を占めており、相続トラブルが生じるかどうかは遺産額の多寡によるものではないことが分かります。
また、裁判にまでは発展せずとも、相続によって親族間の関係性が悪化したケースはかなり多いとされています。
どんなに仲の良い家族でも、相続トラブルをきっかけにわだかまりができることも珍しくありません。
遺産額が少ないからといって油断せず、後述するような相続対策をしっかりとしておいたほうがいいでしょう。
相続で揉める人と揉めない人の差はどこにあるのか
遺産に不動産があったり、相続人同士の関係が複雑だったりすると相続トラブルが生じやすいと前述しましたが、その他にも、相続で揉める家族には仲の悪さや不公平感の問題を抱えているなどの特徴があります。
相続で揉める家族の特徴は何か?
相続で揉める家族の特徴には
- ①兄弟の仲が悪い・疎遠である
- ②生前贈与を受けた相続人がいる
- ③親の介護の負担が偏っていた
などが挙げられます。
相続人同士の中が悪いことや、不公平感が高い場合は相続トラブルの原因となります。それぞれの特徴がトラブルにつながりやすい理由を簡単に説明しましょう。
①兄弟の仲が悪い・疎遠である
兄弟の仲が悪いと遺産分割協議で揉めることが多く、疎遠の場合はそもそも連絡がつかなくて話し合いが進められないといったことが挙げられます。
②生前贈与を受けた相続人がいる
生前贈与を受けた相続人がいると、相続人間で公平性を保つために「特別受益」として得た利益分を相続分から差し引く可能性(特別受益の持戻し)がありますが、これをするかどうかで揉めることが多いです。
③親の介護の負担が偏っていた
親の介護の負担が兄弟姉妹の誰か1人に偏っていると、その貢献に対して他の相続人より多く財産を分けてもらいたい(寄与分の主張)と考えるケースが多く、これを認めるかどうかでトラブルになることがあります。
相続で揉めないためには遺言を作成すること
相続トラブルを回避するためには、遺言を作成することが大切です。
遺言書は相続財産について、
- ①誰に
- ②どの相続財産を
- ③どのように
引き継ぐのか、自らの希望を書くことができます。
遺言によって誰がどのように遺産を引き継ぐかを決めておけば、あまりにも不公平な内容でない限りは、相続人同士でのトラブルを回避できるかもしれません。
また、遺言は法律に則った書式で作成しなければ法的効力が認められないため、相続で揉めることが予想される場合は自筆証書遺言よりも公正証書遺言を作成することをおすすめします。
理由としては、公証人の立ち会いのもとに作成する公正証書遺言とは違い、自筆証書遺言は有効性が争われる可能性があり、また、紛失や盗難・改ざんなど保管上の不安があるからです。
- 遺言書には法的効力のある内容以外にも、遺言書を書くにあたっての気持ちや、相続についての考え方を記すことができます。
- むしろ、相続の指定に関する理由を書いたり、家族への思いを記したりすることも相続トラブルを未然に防ぐという意味で大切です。
よくある相続トラブルの原因と回避の方法まとめ
- 思わぬ相続人(非嫡出子や相続権を失った人)が現れると誰が相続人になるのか、また、相続分が変化するなどしてトラブルが生じやすい
- 相続人同士の仲が悪かったり、遺産に不動産が占める割合が多いと遺産分割協議で揉めやすい
- 高額な財産を相続したときは相続税の額も比例して多くなるので、遺産分割においては相続税についても考慮する必要がある
- 相続で揉める家族は仲の悪さや生前贈与の有無・親の介護の偏った負担などによって不公平感の問題を抱えている
- 相続トラブルを回避するには遺言の作成が有効的
- 遺産額が少ないケースでの相続トラブルが全体の7割を占めるのでどの家庭も無関係とはいえない
以上、よくある相続トラブルの原因と回避の方法について解説しました。